ヒルトップにようこそ 37

キョトンとしている佐知子に向かって、茉莉が続けた。
「佐知子さん、お姉さんの指輪の方が気掛かりなのね」
「え、そうかな。今は何も考えてなかったわ」
「一昨日、お姉さんのおでこでスコープしたのと、ほとんど同じ映像が見えたわ」
「ってことは、今のところ、指輪は無事ってことだな」
マスターが口を挟んだ。確かにそうだ。スコープで見える映像は、その探し物の、現在の映像だ。一昨日と同じ場所の映像が見えたということは、指輪は今でも、一昨日と同じ場所にあるということだ。これは、茉莉と佐知子に少なからず元気を与えた。
「でも、綿にくるまれてなかったわ。いちど綿から出して、また、グローブボックスに戻されたみたいなの」
「犯人がか? そいつは変だな。クルマより高い指輪だぜ。オレなら戻さずにポケットにしまうけどな」
ある意味、泥棒より悪質かも、と茉莉は思った。
「もしかしたら、本物と思わなかったんじゃないかしら」
佐知子が言った。
「私も初めてあの指輪見たとき、正直言って、オモチャじゃないかって思ったの。うそ臭いくらい大きいから・・・」
茉莉とマスターは目を丸くして息を飲んだ。今更ながらに、綾子の指輪のすごさが分かった気がした。
 しかし、この映像ではラチが開かない。クルマの周辺が見えなければどうしようもない。
「もう一度スコープするわ。おでこ出して」
「ごめんなさい。さっきは何も考えてなかったわ。クルマのことを考えればいいのね」
少し神妙な顔で言った佐知子の額に、茉莉は再び手を当てた。
 佐知子の、メタリックピンクのヴィッツが茉莉のまぶたに浮かんできた。周りの様子も、少しずつではあるが見えてきた。佐知子のヴィッツの隣には、大きな4WDらしいクルマが見える。反対側には、黒っぽい大きなセダンがある。どうやら、大きな倉庫のような場所にたくさんのクルマと一緒に並んでいるようだ。
 倉庫の様子がもう少しつかめないかと見回してみた。暗い壁(?)の一部に、少し明るい部分がある。はっきり見えないが、どうやら窓のようである。茉莉は意識を集中した。窓の外の様子でも見えないかと思ったのである。さすがに、そこまではっきりした手がかりは得られなかったが、そのかわり、期待以上の大きな収穫が得られた。窓に、大きな字が書いてあったのだ。裏文字になっていたので、始めはよく分からなかったが、どうやら「運」の文字らしい。

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