ヒルトップにようこそ 49

 「それにしても、あと20件。頑張らなくちゃね」
茉莉は、佐知子のヴィッツが何かの手違いで、間違って盗まれたにしても、じゃあ、誰の車と間違われたのか、想像がつかなかったし、それがわかったとしても、どこにあるかの手がかりにはならない公算が大きい。結局、地道に今の方法で潰していくのが、遠回りに見えて、実は近道のような気がしてきた。
「あたしね、地図見てて思ったんだけど……」
地図を指さしながら、佐知子が切りだした。
「このあたりの7件、かたまってるでしょ。ここをあたしが歩いてまわるから、茉莉さんは、ここから、こっちのほうを車でまわってくれない?」
「そうね、手分けしたほうが早いしね。じゃ、お互い、それらしい倉庫を見つけたら、必ず連絡をとりましょう」
お互いに、携帯電話の番号を確認しあって、二手に別れることにした。
 レストランを出ると、二人は、まずいちばん近いコンビニに寄って、地図をコピーした。
「じゃ、佐知子さんが7件まわり終わったら、また合流しましょ。電話くれたら迎えに来るわ」
「できれば、7件まわる前に見つけたいものね」
 佐知子と別れた茉莉は、少し離れた9件目の運送会社に向かうことにした。午前中に、街の東方面をチェックした。街中の運送会社は佐知子が受け持つことになり、茉莉が担当するのは、北側の山の方面から西側を回り、南側の港方面のルートだ。
 少しでも早く、佐知子の車を見つけなければならない。さっきスコープした時は大丈夫だったが、指輪の方が、いつまで無事でいられるかわかったものではない。車は、ロシアや東南アジアに持っていくのに、二、三日は余裕がありそうだが、ダイヤの方はすぐにでも売り捌(さば)かれそうだ。
 赤信号で停まりながら、ここまで考えたところで、茉莉はハッとした。信号が青に変わったのも気づかなかった。
 後ろの車が、たまりかねて、クラクションを鳴らした。茉莉は、仕方なしにのろのろと車を発進させ、すぐに道路脇に停車させた。

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