ヒルトップにようこそ 43

 午前中に8軒の運送会社をまわり、どれも空振りに終わっている茉莉と佐知子は、ファミリーレストランで、休憩がてら昼食をとることにした。
 ウエイトレスに案内されて席についた二人は、「ふうーっ」とため息をつきながら、どっかりと腰を下ろした。
「なかなかうまくいかないものね」
佐知子が言うと、茉莉も、
「ホントね。でも、あと20件か。何とか今日中にはまわりたいわね」
と答えつつ、ウエイトレスの置いていった水を一気に飲み干した。
 メニューを見ていても、なかなか頭に入ってこない。適当に佐知子に合わせることにした。当の佐知子は、一生懸命メニューとにらめっこしている。
「あー、パスタのランチと、ピザのランチ、どっちにしようかな」
「じゃ、二人で両方取って、半分こしましょう」
「わあい」
注文は佐知子に任せて、ぼんやりと外を眺めていたら、さまざまな車が駐車場に入ってくる。ちょうどお昼時だ。店の中には、忙しそうなサラリーマン風の人や、学生風のカップル。一番多いのは、オバチャンの一団だ。
 再び視線を駐車場に移すと、茉莉は不意にマスターの言葉が引っ掛かり始めた。「なんでヴィッツを・・・」
 駐車場に駐まっているのは、大きい車から小さい車、営業のバンや、大きな4WD。奥様のベンツやBMW。私がもし盗む立場なら、やはり少しでも高く売れそうなものを選ぶだろう。同じリスクなら、多少なりとも小型車より大型車、安い車より高い車を狙うはずだ。佐知子たちのマンションでも、もっと値段の高そうな車は他にもあったはずだ。外車らしい車も駐まっていたし。
 やはり、ヴィッツに、なにか貴重なものでも載っていたのか。だが、指輪のことは他に知る人はいないはず。他に何か?
「ねえ、佐知子さん。指輪以外で、ヴィッツに何か高いもの積んであった?」
「・・・いいえ、ぬいぐるみが載ってるくらいよ」
佐知子は考えながら答えた。
 ぬいぐるみ! まさか、ぬいぐるみに何か・・・例えば覚せい剤みたいなもの・・・が、隠してあって、警察の目を逃れるために、一時ヴィッツに隠した。それで、今になって、取り戻しに来た。うん、ありそう。ありそう。
「ねえ、ねえ、佐知子さん。そのぬいぐるみ、人からもらったもの、ある?」
「え? あ、ある・・・けど、どうして?」
「誰から?」
茉莉の剣幕にたじろぎながら、佐知子は、
「お、お姉ちゃん」
「・・・えっ? 他には?」
「ないわよ。あとは、あたしが買ったのばっかり」
「あ、・・・そう」
いいアイデアだと思ったが、どうやら空振りのようだ。
「なに、どうして?」
佐知子に問い詰められて、茉莉は、今しがた自分が考えた推理を話してみた。何か他に手がかりが出てくるかもしれないと思ったのだ。ところが、
「でも、だったら、ぬいぐるみだけ持っていくんじゃないかしら?」
という佐知子の一言で、ガックリと気落ちしてしまった。言われてみれば、その通りだ。車上狙いと車ごと盗むのとでは、随分リスクも違うだろう。そうまでして車を盗むという理由は何だろう?

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