ヒルトップにようこそ 45

 自分なりの推理が外れて、気落ちした茉莉は、腰がなくて、まるでうどんのようなパスタを口の中に押し込みながら、これだったら『ヒルトップ(ウチ)』のほうがよほど美味しいと思った。
 それにしても、車に高価なものが載っているわけではないとしたら、あとは何だろう?
「茉莉さんの車って、かわいくていいですね」
窓の外を眺めていた佐知子がふとつぶやいた。
「でしょ、あの丸っこいところがお気に入りなの」
「お店とか駐めておいても、すぐわかりますね」
「そうね。私はマスターと違って、車にあんまり詳しくないから、なるべく変わった形の車にしたの。でも、案外たくさん走ってたわ」
「私のヴィッツは、みんな乗ってるから、大変ですよ。違う人の車にキー差し込んで、『開かない、開かない』って頑張ってたこと、二回あるもん」
「あははは、マーちゃんじゃ今のところそんな経験ないな。でも、確かにヴィッツって多いよね。今このレストランにも二台駐まって・・・る・・・」
茉莉は、はっとした。そうか、もしかして、ヴィッツは、何かの間違いで、持っていかれたのではないのか。本当の狙いは、別の車だったんじゃないのか。
「ちょっと電話してくるね」
茉莉は、レストランの入り口のところへ行った。マスターに意見を求めようと思ったのだ。携帯電話を取り出して、ヒルトップにかけた。
 トゥルルルル、トゥルルルル、・・・。
 出ない。今ごろはランチタイムで忙しいとはいえ、電話に出られないほどではないだろう。
 仕方なく、佐知子の待つ席へ戻った。
「どうしたの?」
問いかける佐知子に、
「ちょっと、『ヒルトップ(おみせ)』に電話したんだけど、マスターったら、出ないの。まったく、仕事ほっぽりだして、どこほっつき歩いてんだか」
茉莉は、自分のことは棚に上げて、憤然として答えた。
「携帯にかけてみた?」
「ううん、マスターは携帯持ってないの」
「今どき珍しいですね。でも、いいんですか? 連絡取れなくて」
「あ、別にいいのよ。たいした用事じゃなかったから」
と答えたものの、「別にいい」わけではなかった。ホントに、マスターったら、どこに行っちゃったのかしら。

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