ヒルトップにようこそ 46

 カチャッ。
 軽い音がして、葛西佐織の部屋のドアが内側に開いていった。
「あ、開いちゃいましたね」
マスターは言いながら、そっと部屋に入っていく。
「あ、ちょっと、ちょっと」
綾子は、マスターを止めようとした。マスターは、一人だけ中に入ると、ドアから顔だけ出して、
「綾子さんは、外で待っていてくれますか?」
と声を掛けて、中に入っていった。
「葛西さーん、いらっしゃいますか?」
玄関のところで、マスターは一声かけてみた。が、やはり返事がない。
「失礼しまーす」
一応一声かけてから、靴を脱いで部屋に上がった。
 葛西佐織は、趣味か職業か、やはりカメラや写真に関係が深いらしい。壁には、自身で撮ったと思われる写真パネルが何枚か掛かっている。雪の積もったどこかのお寺、魚をくわえたカワセミのアップ、街中の交差点をビルからだろうか、高い位置から撮ったもの・・・ノンジャンルというか、一貫性がないというか、実にさまざまな写真が並んでいる。マスターには、果たしていい写真なのか、そうでもないのか判定がつかなかったが、少なくとも上手に撮れている写真であることはわかった。
 部屋の中は、ここだけ大地震か爆発でもあったかのように、荒らされ放題だった。写真の本、雑誌などが雑然と散らかされ、本棚や引き出しも中身が引っ張り出されている。明らかに、この部屋の住人ではない誰かが何かを探し回ったようである。
 何を探していたのか、リビングも、寝室も、一通りでなく散らかされている。が、次の部屋に入った時、だいたい理解できた。
 その部屋は、ドアを開けた瞬間は、真っ暗で、全く何も見えなかった。入り口には、ご丁寧に、真っ黒なカーテンが二重に掛けられている。二重のカーテンのすき間を通りすぎて、手探りでドア付近を探すと、スイッチらしき物があった。スイッチを押してみると、真っ赤な明かりが点いた。その場所は、まさに、テレビや映画でたまに見る、写真現像用の暗室に違いなかった。見回してみると、真っ赤な部屋の中の様子が少しずつ見えてきた。テーブルの上には、何枚かのトレイが重ねてあり、そのそばには、現像液やら何やら、よくわからない液体の入ったボトルが二、三本置いてある。ピンセットも何本か転がっている。
 窓は、段ボールで塞いであり、その上から、黒い布で覆って、端には目張りがしてある。キッチンでも洗面所でもないはずだが、簡易流し台が置いてあり、蛇口のついた大きなウォータータンクが据え付けてある。頭上には、ネガフィルムや、プリントした写真を干すためか、クリップのたくさん並んだ細いロープが何本も通っている。178センチのマスターだとスレスレの高さだが、女性の葛西佐織にはちょうどよい高さなのだろうか。

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この記事へのコメント

2007年11月10日 20:36
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