ヒルトップにようこそ 77

 男たちは、振りかかるガラスの破片に瞬間たじろいだあと、一様に、目を押さえてせき込みはじめた。そこへ飛び込んできたマスターが、男たちのみぞおちに一発ずつパンチを食らわした。
 一瞬にして三人の男たちを倒したあと、マスターが戻ってきて、
「プハー。最近息が続かんな」
と言って、大きく息を吸い込んで、再び男たちを縛り上げに行った。
 ハックション!
  マスターは今度はくしゃみをしながら戻ってきた。風上に立っていた茉莉たちには、それほど影響がなかったので、最初は何が起こったのか分からなかったが、マスターの体中からコショウの臭いがした。さっきマスターが放り投げたものは、どうやらコショウの瓶だったらしい。マスターは、二、三回くしゃみをすると、
「さ、お約束お約束」
と言いながら、水鉄砲を持って三度(みたび)男たちの元へ戻っていった。
 くしゃみの止まらないマスターと茉莉たち三人の女性は、やっとのことで船から脱出した。茉莉が振り返って、
「無事だったなんて、奇跡ね」
とつぶやいた。
「正義の味方は、無事に決まってるじゃないか」
マスターが、サングラスをはずしてにっこり笑った。その目は、優しいいつものマスターの目に戻っていた。

 30分後、密輸船「ばっかす」は、陸をパトカー、海を海上保安庁の船に取り囲まれていた。乗り込んでいった警察官たちは、犯人グループの全てが、手足を結束バンドで縛られて所々に転がされているのを見て驚いた。しかし、それよりも不思議だったのは、倒れている男たちはことごとく、口から赤い糸を引いて、白目を剥いていたことだった。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

面白い

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック