ヒルトップにようこそ 78

 簡単な事情聴取が済んで、解放されたのは、夜の11時をまわっていた。ヴィッツはまだ返してもらえなかったが、指輪のことは警察には知らせなかった。ややこしい手続きで返してもらえないと困ると思ったのだ。マスターがあとから知り合いの刑事に聞いた話では、やはり窃盗団も、あまりに非現実的に大きな指輪だったため、オモチャの指輪だと思ったらしい。高級セダンに載っていたら指輪もただでは済まなかったろうが、ヴィッツに載っていたのが幸いしたようだ。
 ヴィッツが返してもらえないので、茉莉のレビューに佐知子が乗り、マスターは自分の車で帰ることになった。葛西佐織は、念のため救急車で病院に運ばれた。
 帰り道のレビューの中で、
「今日は本当にありがとうね。おかげで車も指輪も取り戻せました。本当にありがとう」
と、佐知子が改まった態度で茉莉にお礼を言った。
「やだ、そんな、改まらないでよ」
茉莉は、真っ赤になって遮った。照れている茉莉の様子を察した佐知子は、
「でも、自動車窃盗団も一網打尽にできて、あたし達お手柄よね」
と、少し話題を切り換えた。
「そうね。何となく、美味しいところは、全部マスターに持っていかれた感じだけどね」
茉莉のセリフ自体は悔しそうにも受け取れるが、口調は、むしろ自慢気にも聞こえた。
「マスターって言えば、『ヒルトップ(あのおみせ)』以外に何かやってるの?」
「え、何で?」
「なんか、ただ者じゃない感じがして。普段はすごく優しそうなのに、あの連中よりもすごみがあったりして・・・」
「・・・」
「それに、茉莉さん目をつぶってたけど、あのナイフ投げは、すごかったわよ」
「・・・、あたしも知らないの。自分じゃ、『昔はやばいことやってた』なんて言ってるけど、ホントのところは分からないの」
「ふうん・・・。でも、ちょっとカッコよかったな。ピンチに助けに来てくれる王子様みたいで」
「『オウジサマ』というより『オジサマ』だけどね」
茉莉は、佐知子がマスターを褒めるのを聞いているのは、悪い気分ではなかったが、反面、何とも言えない不安も感じた。
「ところで、指輪はどうするの?」

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  • 感謝の気持ちと一緒に現金が毎日何....

    Excerpt: <a href="http://kamadarin.at.webry.info/200712/article_11.html" target="_blank">ヒルトップにようこそ 78</a> Weblog: 超簡単!完全自動アフィリエイトで毎月10万を稼ぐ方法 racked: 2007-12-11 13:05