ヒルトップにようこそ 80

 車を店の駐車場に入れて、店の中をのぞくと、マスターが一人、ぼんやりとタバコをふかしているのが見えた。
 茉莉が扉を開くと、マスターは、
「おかえり」
と迎えてくれた。その声を聞いて、マスターの顔を見た途端、茉莉はひざがガクガクと震えだした。そしてマスターの顔がぼやけてきた。
「ただ・・・い・・・ま」
言い終わらないうちに、茉莉の瞳から、涙があふれ出してきた。止めようと思っても、あとからあとからとめどなく流れ落ちてくる。
 マスターはそんな茉莉の肩を大きな両手でしっかりと支えて、
「もう大丈夫だ。よく頑張ったな」
と言いながら、優しく髪を撫でた。
「うわぁん・・・」
茉莉は、マスターの胸にすがって、思いきり泣き出した。マスターに支えられて、泣きたいだけ泣いているうちに、張りつめていた糸が、一本一本ほどけていくようだった。
 カウンターに座って、マスターの入れてくれたジャスミンティー(茉莉花茶)を飲んでいると、ようやく気持ちが落ち着いてきた。ジャスミンティーの鎮静作用だけでなく、マスターの心遣いが嬉しかった。
「今日は大冒険だったな。指輪も車も戻ったし、窃盗団は捕まえられたし」
「みんなマスターのおかげよ」
気分が落ち着いてくると、茉莉には知りたいことがいっぱいあった。自分が人質にとられたときの、あのナイフ投げの腕前。小さなコショウの瓶を放り投げて、それに弾丸を命中させる銃の腕前。いったい、何者なのだろう。茉莉は、思い切って口を開いた。
「ねえ、今まで、ちゃんと聞いたことなかったけど、マスターって何者なの?」
「へっ? 喫茶店のマスターだけど?」
「そうじゃないの。昔、何やってたの? どうしてナイフ投げができたり、拳銃が撃てたりするの? 隠さずに教えて!」
マスターは、しばらく茉莉の目を見つめて黙っていたが、やがて口を開いた。

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