ヒルトップにようこそ 50

 ・・・。 「ぷっ!」 一瞬間(ま)を置いて、綾子が吹き出した。 「あ、あれ? 怖くなかったですか? けっこう渋く決めたつもりだったのにな」 「マスターって、真剣な顔の時と、冗談の時と、目が全然違うんですもの」 「そうですか?」 「さっき、『部屋に戻れ』って言われたときの方が、目がよほど怖かったですよ」 「・・・でも、一瞬…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ヒルトップにようこそ 49

 「それにしても、あと20件。頑張らなくちゃね」 茉莉は、佐知子のヴィッツが何かの手違いで、間違って盗まれたにしても、じゃあ、誰の車と間違われたのか、想像がつかなかったし、それがわかったとしても、どこにあるかの手がかりにはならない公算が大きい。結局、地道に今の方法で潰していくのが、遠回りに見えて、実は近道のような気がしてきた。 「あ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ヒルトップにようこそ 48

 綾子には、何が起きているのか、つながりがさっぱりわからなかった。しかし、ただ事ではないことは、マスターのただならぬ様子から分かってきた。 「あの、何が起こっているんでしょうか? 佐知子の車が盗られたことと、何か関係があるんでしょうか? 佐知子は大丈夫なんでしょうか?」 マスターはエレベーターに乗り込み、『下』のボタンを押しながら、…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ヒルトップにようこそ 47

 この部屋も、荒らされた様子があったが、ほかの部屋とは違って、少し丁寧に探したようだ。引き出しや棚が探られた感じはするが、何でもかんでも引っ張り出すわけではなく、慎重に探し物をした様子が窺える。床やテーブルに散乱したものはなく、むしろ必要以上に片づけられている感じすらする。  マスターは、一通り暗室を確認すると、浴室と、トイレを簡単に…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ヒルトップにようこそ 46

 カチャッ。  軽い音がして、葛西佐織の部屋のドアが内側に開いていった。 「あ、開いちゃいましたね」 マスターは言いながら、そっと部屋に入っていく。 「あ、ちょっと、ちょっと」 綾子は、マスターを止めようとした。マスターは、一人だけ中に入ると、ドアから顔だけ出して、 「綾子さんは、外で待っていてくれますか?」 と声を掛けて…
トラックバック:0
コメント:1

続きを読むread more

ヒルトップにようこそ 45

 自分なりの推理が外れて、気落ちした茉莉は、腰がなくて、まるでうどんのようなパスタを口の中に押し込みながら、これだったら『ヒルトップ(ウチ)』のほうがよほど美味しいと思った。  それにしても、車に高価なものが載っているわけではないとしたら、あとは何だろう? 「茉莉さんの車って、かわいくていいですね」 窓の外を眺めていた佐知子がふと…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ヒルトップにようこそ 44

「あ、綾子さん」 不意に後ろから声をかけられて、ちょっと驚いたので声がひっくり返っている。オホン。とせき払いをして、声のトーンを落として、 「先日はどうも失礼いたしました。指輪は今、鋭意捜索中ですので、ご心配なく。・・・今日は、会社はお休みですか?」 「いいえ。・・・佐知子がお店にうかがったと思うんでご存知と思いますが、佐知子の車…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ヒルトップにようこそ 43

 午前中に8軒の運送会社をまわり、どれも空振りに終わっている茉莉と佐知子は、ファミリーレストランで、休憩がてら昼食をとることにした。  ウエイトレスに案内されて席についた二人は、「ふうーっ」とため息をつきながら、どっかりと腰を下ろした。 「なかなかうまくいかないものね」 佐知子が言うと、茉莉も、 「ホントね。でも、あと20件か。…
トラックバック:1
コメント:0

続きを読むread more

ヒルトップにようこそ 42

 茉莉と佐知子は、一件目の目的地にたどり着いた。近くの空き地に車を駐めて、歩いて様子を見てみることにした。佐知子は、車から降りると、少しふらつくのを覚えた。茉莉の運転は紛れもなく安全運転だったのだが、なぜか、佐知子は全身に力が入っていた。少しひざが笑っていた。  まずは、まわりを一周りしてみることにした。運送屋には、確かに倉庫があり、…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ヒルトップにようこそ 41

 茉莉は、家につくと、表に駐めてあるずんぐりした抹茶色のマーチに乗り込んで、内側から助手席のドアを開いた。 「さあ、行きましょう! ナビお願いね」 「はい、お願いします。・・・この車、おもちゃみたいでかわいいですね」 「あたしのかわいいマーちゃんよ。よろしくね。・・・シートベルト締めて」 「あ、はいはい」 佐知子がシートベルト…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ヒルトップにようこそ 40

 茉莉と佐知子は、まずはタウンページの中から、会社名に『運』の字のつく運送屋を手当たり次第ピックアップし始めた。この街だけで、四十六件の会社がピックアップできた。これでも、全ての運送会社の半分弱である。『運』の字を使わない運送会社が、案外多くて助かった。その中から、二人の意見で、明らかに有名な会社は外してゆき、二十八件に絞った。他の業種…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ヒルトップにようこそ 39

「とにかく、東南アジアなんかに持ってかれちゃう前に、クルマを見つけなきゃ」 「・・・そうだな」 マスターが、思いのほか素直に引き下がった。こういう時は、言葉とは裏腹に、いつまでもこだわっているということを茉莉は知っていた。だが、マスターの方から話題を切り換えてきた。 「ところで、『運』って文字が見えたんだね」 「あ、そうそう。よ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ヒルトップにようこそ 38

 と、突然ふっと映像が消えた。茉莉は鼻の奥がツーンとキナ臭くなったのを感じると同時に意識が遠のいていった。右手が、佐知子の額を離れたかと思うと、体全体が何かに引っ張られるように、後ろにのけぞっていく。 「きゃっ!」 佐知子が叫んだ。危うくイスから転げて頭から落ちそうな茉莉をマスターが抱きとめた。 「おいおい、大丈夫か?」 茉莉を…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ヒルトップにようこそ 37

キョトンとしている佐知子に向かって、茉莉が続けた。 「佐知子さん、お姉さんの指輪の方が気掛かりなのね」 「え、そうかな。今は何も考えてなかったわ」 「一昨日、お姉さんのおでこでスコープしたのと、ほとんど同じ映像が見えたわ」 「ってことは、今のところ、指輪は無事ってことだな」 マスターが口を挟んだ。確かにそうだ。スコープで見える…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ヒルトップにようこそ 36

 事情がわかってくるにつれて、茉莉の気持ちは軽くなってきた。佐知子が本気で盗もうとしたわけではなかったことが確認できたのが嬉しかった。だが、問題は佐知子の気まぐれでは済まないところまで来てしまっている。茉莉は、今、もっとも気になっていることを恐る恐る尋ねてみた。 「ところで、指輪は、まだクルマの中に入ったままなの?」 胸につかえてい…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ヒルトップにようこそ 35

 その時、いつの間にかカウンターに戻っていたマスターが、トレイにカップを載せて再び茉莉と佐知子のテーブルにやって来た。 「あー、ちょっとお邪魔します。これ、カモミールティー。『ヒルトップ(当店)』自慢のハーブティーです。気分が落ち着きますよ」 と、カップを二つ置いてまたカウンターに戻っていった。  カモミールティー独特の、甘い、リ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ヒルトップにようこそ 34

「バレちゃったか、お見事。さすが超能力探偵ね」 と言った後、 「・・・あの、・・・警察に突き出すの?」 と、佐知子は少し怯えたような目で茉莉を見つめた。 「まさか! そんなことするわけないわ。私がお姉さんに頼まれたのは、指輪探しであって、犯人探しじゃないもの。警察にも、お姉さんにも言うつもりはないわ。それに、今は、佐知子さんも被…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ヒルトップにようこそ 33

 自分も向かい側の席に壁を背にして腰掛けて、佐知子の顔を見ながら、茉莉は尋ねた。 「いったい、いつ?」 「わかんないの」 とだけ答えて、うつむいてしまった。  少しすると、マスターがコーヒーを持ってやってきた。 「モカでよかったかな。少しぬるめにしてあるから、ミルクをたっぷり入れてゆっくり飲むと落ち着きますよ」 と言って、カ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ヒルトップにようこそ 32

 翌朝、モーニングサービスの時間帯を忙しく立ち働きながら、茉莉は、佐知子にどう切り出したものか、頭を痛めていた。何とか上手に話をもっていって、自分から告白するように仕向けられないか。それとも、やはりあまりまわりくどくするのはやめて、単刀直入に言った方がいいだろうか。  ぐずぐず思い悩んでいるうちに、モーニングサービスの混雑も一段落つい…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ヒルトップにようこそ 31

 マスターのクルマで綾子と佐知子のマンションの前に着いた時には、8時をまわっていた。マンションの駐車場を見た茉莉は、 「あら、まだ戻ってきてないみたい」 とつぶやいた。 「あの、空いたとこ?」 昨日、佐知子が駐車した場所が一台分空いたスペースになっている。ヴィッツはなかった。 「うん、でも、綾子さんはいるみたい」 「なんでわ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more