ヒルトップにようこそ 67

 茉莉と佐知子は、とにかく部屋を一通り調べてみることにした。ドアは厚く丈夫で、やはり外側からカギがかけられている。取手は全く回らない。体当たりしてみても、びくともしない。ドアには、直径20センチほどののぞき窓があるものの、壁には窓もなく、ドア以外の壁には、切り込みすらない。  茉莉は天井を見上げた。映画なんかでは、大体通風口から逃げ出…
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ヒルトップにようこそ 66

「で、あなたたちはどうしたの? まさか、助けに来てくれたわけでもなさそうだけど」 「私もヴィッツを盗まれたんです、昨夜(ゆうべ)。で、あの倉庫を見てたら捕まっちゃったんです」 葛西は驚いた声で言った。 「よくここが分かったわね。私は何ヶ月も調べて突き止めたのに」 佐知子が得意げに答えた。 「優秀な探偵さんがついてますから」 …
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ヒルトップにようこそ 65

 「心配するな。殺しゃしねえよ」 扉を開けながら、作業服の男が茉莉と佐知子に話しかけた。 「さ、入れ」 と言って、二人を部屋の中に押し込んで、外からカギをかけた。 「ま、あとからじっくりかわいがってやるよ」 扉の小窓からのぞき込んで、いやらしく笑った。 「ホントにかわいがるなら、助けて欲しいものね」 茉莉が腕を組みながら毒…
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ヒルトップにようこそ 64

「もしもし・・・。あ、お父さん。・・・うん、今、佐知子の家でレポートやってるの。今夜泊まると思うから・・・。うん、じゃあね。おやすみなさい」 一方的にしゃべって電話を切った。スーツの男は、満足げにうなずいて、 「じゃあ、携帯はこちらでお預かりしようかな」 と言った。作業服の男が、茉莉から携帯電話を取り上げた。そして佐知子の方に向か…
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ヒルトップにようこそ 63

 コーヒーもケーキも、あとから出てきた番茶も飲み終わって、あくびしていたところに、先程フィルムを受け取った中年の社員が、ネガと、プリントされた写真の束を持って戻ってきた。 「いやあ、大変お待たせいたしてしまって申し訳ございません。たった今でき上がりました」いたしてしまって申し訳ございません。たった今でき上がりました」 「無理言ってす…
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ヒルトップにようこそ 62

 ともかく、次のB倉庫へ行こうということで、踏み台の木箱から降りた時だった。 「何をしている!」 男の鋭い声に振り向いた茉莉と佐知子は、顔に懐中電灯を当てられて、顔をしかめた。真っすぐ当たってくる懐中電灯の光を避けるように、顔を斜めにして、目を細めた二人に、 「こんなところで何をしている。あの女の仲間か」 再び、男が口を開いた。…
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ヒルトップにようこそ 61

 高さにして2メートルくらいだろうか。最初に茉莉が木箱に飛びついて、木箱の上面に手をかけた。茉莉のお尻を佐知子が押し上げるようにして、茉莉はなんとか木箱の上に乗ることが出来た。今度は、伸ばした佐知子の手を茉莉が引っぱり上げて、佐知子もなんとか木箱の上によじ登った。二人とも、ハアハア言って、しりもちをついた。 「あたし、ダイエットするわ…
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ヒルトップにようこそ 60

「・・・あった。『ダイワ海運』!」 茉莉の指さす方を佐知子が見ると、確かに、窓に、白い文字で『ダイワ海運』と書かれた倉庫が並んでいる。茉莉は、一度注意深く前を通り過ぎることにした。  ダイワ海運の倉庫は、4つ並んでいた。その4つの倉庫の全てが、窓に『ダイワ海運』と白文字で書かれている。茉莉は、200メートルほど行き過ぎたところで車を…
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ヒルトップにようこそ 59

 茉莉の車が海の見える所まで来た頃には、もう夕暮れ時になっていた。港は、海浜公園を真ん中にして、大きく北と南に分かれる。どちらかというと、北側は観光寄りで、客船や観光船が主に出入りする。もちろんコンテナを積んだ船も出入りするが、そういった類いの船は、主に南側を利用している。おしゃれなレストランやバー、ショッピングモールなどがあるのも北側…
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ヒルトップにようこそ 58

 港に向けての道を走っていた茉莉は、運転にもすっかり慣れてきた。ようやく肩の力が抜けてきた。そこへ突然、携帯電話が鳴った。わっ、どうしよう。携帯が鳴ってる。出ればいいのかしら、いや、違うわ。どこかに停めなきゃ。  いきなりの携帯電話の着信音に慌ててしまって、やっとの思いで車を路肩に寄せた。せっかく慣れてきていたのに、またとっ散らかって…
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ヒルトップにようこそ 57

 店員の描いた下手くそな地図を頼りに、マスターは、現像専門の、 小さな工場のような建物を訪れた。建物の割に小さなドアを開くと、地味な事務所のような一室にいた五~六人の社員に緊張が走った。 「あのー、さっき電話で・・・」 言い終わらないうちに、 「大至急やらせていただきます」 と、中年の社員が、最敬礼してフィルムを受け取った。 …
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ヒルトップにようこそ 56

クラクションに押されながら、仕方なく車を脇に寄せた茉莉は、漠然と思いついたことを頭の中で整理し始めた。  盗難車を外国に売り捌(さば)く場合、とりあえず倉庫か何かに一時保管するだろう。一台ずつ外国に運ぶわけではないはずだから、何台か、ある程度の数がまとまるまでは、ためておくはずだ。で、何台かまとまると、いよいよ海外に運ばれることになる…
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ヒルトップにようこそ 55

「ねえ、お兄さん」 マスターは、さっきからこちらに背を向けて、なるべく目を合わさないようにしている店員に声をかけた。店員は、ビクッとしたように振り返り、 「な、何でしょうか?」 と答えた。マスターが3本目のネガを見せながら、 「このフィルムってさ、ASA100だよね?」 と聞くと、4本目の現像に取りかかっている店員は飛んできて…
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ヒルトップにようこそ 54

 マスターは、タバコをくわえたまま、煙そうな顔で眉をしかめながら、3本目の写真をめくっていた。  さっき見た2本目の写真は、富士山周辺の写真が並んでいた。目の前にそびえる大きな富士、五千円札と同じ場所から撮ったと思われる、湖の奥の形のいい富士。他にも、右に太平洋らしき海があり、その奥にかすんでいる小さな富士、夕暮れ時か、全体に赤みがか…
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ヒルトップにようこそ 53

佐知子は、ジャンプして両手を下に伸ばして体を支えると、右足をフェンスの上にかけ、ひょいと飛び越えた。小走りに2番倉庫へ走る。扉のすき間に顔をくっつけて中をのぞき込んだ。  暗くて見えづらいが、こちらも大きな段ボールが整然と並んでいる。残念ながら盗難車が隠してあるようには見えなかった。  小さくため息を漏らして、扉から顔を離した瞬間だ…
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ヒルトップにようこそ 52

 佐知子は、茉莉と別れてから二件目の運送会社の倉庫の前で立ち止まっていた。直接スコープの映像を見たわけではない佐知子は、今目の前にある倉庫が、どれくらい、条件にあてはまっているのかはわからなかったが、とにかく、倉庫の壁に窓が並んでいて、その窓には、白い文字で「中川運輸」と書いてあった。  佐知子はすぐに茉莉を呼ぼうかと思ったが、せっか…
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ヒルトップにようこそ 51

 マスターは、葛西佐織のプラドから見つけた6本のフィルムを持って、駅前に向かった。「30分スピードプリント」の看板を出している写真屋に入った。 「この6本、大至急、プリントして」 「はい。これに住所と電話番号、名前を書いて」 元ヤンキーと思われる茶髪の店員の差し出したカードには目もくれす、マスターは、 「何分で出来る?」 と聞…
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ヒルトップにようこそ 50

 ・・・。 「ぷっ!」 一瞬間(ま)を置いて、綾子が吹き出した。 「あ、あれ? 怖くなかったですか? けっこう渋く決めたつもりだったのにな」 「マスターって、真剣な顔の時と、冗談の時と、目が全然違うんですもの」 「そうですか?」 「さっき、『部屋に戻れ』って言われたときの方が、目がよほど怖かったですよ」 「・・・でも、一瞬…
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ヒルトップにようこそ 49

 「それにしても、あと20件。頑張らなくちゃね」 茉莉は、佐知子のヴィッツが何かの手違いで、間違って盗まれたにしても、じゃあ、誰の車と間違われたのか、想像がつかなかったし、それがわかったとしても、どこにあるかの手がかりにはならない公算が大きい。結局、地道に今の方法で潰していくのが、遠回りに見えて、実は近道のような気がしてきた。 「あ…
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ヒルトップにようこそ 48

 綾子には、何が起きているのか、つながりがさっぱりわからなかった。しかし、ただ事ではないことは、マスターのただならぬ様子から分かってきた。 「あの、何が起こっているんでしょうか? 佐知子の車が盗られたことと、何か関係があるんでしょうか? 佐知子は大丈夫なんでしょうか?」 マスターはエレベーターに乗り込み、『下』のボタンを押しながら、…
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ヒルトップにようこそ 47

 この部屋も、荒らされた様子があったが、ほかの部屋とは違って、少し丁寧に探したようだ。引き出しや棚が探られた感じはするが、何でもかんでも引っ張り出すわけではなく、慎重に探し物をした様子が窺える。床やテーブルに散乱したものはなく、むしろ必要以上に片づけられている感じすらする。  マスターは、一通り暗室を確認すると、浴室と、トイレを簡単に…
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ヒルトップにようこそ 46

 カチャッ。  軽い音がして、葛西佐織の部屋のドアが内側に開いていった。 「あ、開いちゃいましたね」 マスターは言いながら、そっと部屋に入っていく。 「あ、ちょっと、ちょっと」 綾子は、マスターを止めようとした。マスターは、一人だけ中に入ると、ドアから顔だけ出して、 「綾子さんは、外で待っていてくれますか?」 と声を掛けて…
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ヒルトップにようこそ 45

 自分なりの推理が外れて、気落ちした茉莉は、腰がなくて、まるでうどんのようなパスタを口の中に押し込みながら、これだったら『ヒルトップ(ウチ)』のほうがよほど美味しいと思った。  それにしても、車に高価なものが載っているわけではないとしたら、あとは何だろう? 「茉莉さんの車って、かわいくていいですね」 窓の外を眺めていた佐知子がふと…
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ヒルトップにようこそ 44

「あ、綾子さん」 不意に後ろから声をかけられて、ちょっと驚いたので声がひっくり返っている。オホン。とせき払いをして、声のトーンを落として、 「先日はどうも失礼いたしました。指輪は今、鋭意捜索中ですので、ご心配なく。・・・今日は、会社はお休みですか?」 「いいえ。・・・佐知子がお店にうかがったと思うんでご存知と思いますが、佐知子の車…
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ヒルトップにようこそ 43

 午前中に8軒の運送会社をまわり、どれも空振りに終わっている茉莉と佐知子は、ファミリーレストランで、休憩がてら昼食をとることにした。  ウエイトレスに案内されて席についた二人は、「ふうーっ」とため息をつきながら、どっかりと腰を下ろした。 「なかなかうまくいかないものね」 佐知子が言うと、茉莉も、 「ホントね。でも、あと20件か。…
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ヒルトップにようこそ 42

 茉莉と佐知子は、一件目の目的地にたどり着いた。近くの空き地に車を駐めて、歩いて様子を見てみることにした。佐知子は、車から降りると、少しふらつくのを覚えた。茉莉の運転は紛れもなく安全運転だったのだが、なぜか、佐知子は全身に力が入っていた。少しひざが笑っていた。  まずは、まわりを一周りしてみることにした。運送屋には、確かに倉庫があり、…
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ヒルトップにようこそ 41

 茉莉は、家につくと、表に駐めてあるずんぐりした抹茶色のマーチに乗り込んで、内側から助手席のドアを開いた。 「さあ、行きましょう! ナビお願いね」 「はい、お願いします。・・・この車、おもちゃみたいでかわいいですね」 「あたしのかわいいマーちゃんよ。よろしくね。・・・シートベルト締めて」 「あ、はいはい」 佐知子がシートベルト…
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ヒルトップにようこそ 40

 茉莉と佐知子は、まずはタウンページの中から、会社名に『運』の字のつく運送屋を手当たり次第ピックアップし始めた。この街だけで、四十六件の会社がピックアップできた。これでも、全ての運送会社の半分弱である。『運』の字を使わない運送会社が、案外多くて助かった。その中から、二人の意見で、明らかに有名な会社は外してゆき、二十八件に絞った。他の業種…
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ヒルトップにようこそ 39

「とにかく、東南アジアなんかに持ってかれちゃう前に、クルマを見つけなきゃ」 「・・・そうだな」 マスターが、思いのほか素直に引き下がった。こういう時は、言葉とは裏腹に、いつまでもこだわっているということを茉莉は知っていた。だが、マスターの方から話題を切り換えてきた。 「ところで、『運』って文字が見えたんだね」 「あ、そうそう。よ…
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ヒルトップにようこそ 38

 と、突然ふっと映像が消えた。茉莉は鼻の奥がツーンとキナ臭くなったのを感じると同時に意識が遠のいていった。右手が、佐知子の額を離れたかと思うと、体全体が何かに引っ張られるように、後ろにのけぞっていく。 「きゃっ!」 佐知子が叫んだ。危うくイスから転げて頭から落ちそうな茉莉をマスターが抱きとめた。 「おいおい、大丈夫か?」 茉莉を…
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