ヒルトップにようこそ 76

「マ、マスターッ!」
茉莉の制止を聞かずにマスターが引き金を絞った。
チュー。
「ぎゅーっっ!」
男は再び失神した。
「ホンモノじゃなかったの?」
茉莉は驚いて尋ねた。気がつかないうちに、すり替えていたらしい。
「まさか。いくらなんでも、殺しちゃったら捕まっちゃうじゃん」
マスターは立ち上がりながら、振り返ってにっこり笑った。
「さ、大脱走と行きましょうか」

 葛西佐織を背負ったマスターを先頭に、廊下に出てしばらく行くと、甲板への出口があった。甲板に出たところで、不意にマスターが立ち止まった。船から降りるタラップの所に、作業服の男が三人立っているのが見えた。
「なんだよ。ラスボス倒したあとに、雑魚(ザコ)キャラが出てくるかなあ」
マスターは、小声で毒づきながら、
「茉莉ちゃん、佐知子さん。ちょっと葛西さんをお願い」
と言って、背中から葛西を降ろした。茉莉と佐知子が、両側から葛西の肩を支えた。
「めんどくせえ。まとめて片づけるか」
と言いながら、ジャケットの内ポケットからサングラスを取りだした。マスターがユーノスに乗る時にいつもかけているものだ。レンズの両サイドに、風の巻き込みを防ぐ革の風防がついている。
 サングラスをかけたマスターは、右手に拳銃を持って、左手はポケットから何かを取り出した。
「それ、ホンモノの方?」
茉莉が驚いてマスターに聞いた。
「さあ、どっちでしょう?」
マスターは二、三歩前に出ると、コホン、と咳払いをした。三人の男が一斉にこちらを振り向いた。
「イオナズン!(※RPG『ドラゴンクエスト』シリーズの、大爆発の呪文)
叫ぶと同時に、マスターが左手に持っていたものを男たちの上に向かって放り投げた。次の瞬間、
パーン!
マスターの右手の拳銃が火を吹いた。同時に放り投げた物体が、弾けとんだ。右手に持っていたのは、本物の方だったのだ。マスターは茉莉たちに、
「目を閉じて息を止めろ!」
と言いながら、男たちの所へ飛び込んで行った。

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